妹蛾咲状思


 之 陰尓蚊欲布 虚蝉之 妹蛾咲状思 面影尓所見

 燈火の
 影にかがよふ
 うつせみの
 妹が笑まひし
 面影に見ゆ

 ともしびの
 かげにかがよふ
 うつせみの
 いもがゑまひし
 おもかげにみゆ


( 万葉集 巻11-2642番 作者不詳 )
万葉集 第11巻 2642番歌/作者・原文・時代・歌・訳 | 万葉集ナビ



「妹蛾咲状思」のたった五文字に宿る
イメージの豊かさに惹きつけられた。

「燈の陰」から「面影」へと移ろう
眼差しにより配された「蛾(蝶)」、
虚蝉(うつせみ)=現し身」
といった言葉のひとつずつに、
夢幻のはざまを行き交う命、
その刹那の影ときらめきへの
愛惜の情がにじんでいる。

「咲」の字には、微笑むの意味がある。
「妹蛾咲」から浮かび上がる女性は、
この歌を読む者にも、時をこえて
ふと微笑みかけてくる……まるで
すぐ傍らの近しい人のように、
花に羽をやすめた蝶のように。

( 2025.10.30 イラスト作成 Copilot-Aqua )


残照 – ginmuru-meru


彼岸花


いつの世の
誰が眠るのか
古墳の草むらにそよぐ
彼岸花 露草
豆の花