ginmuru-meru ・STORY ハニワくんノート No.4・

 
 
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ハニワくん ノート

(No.4)

 

 

・ Twitter @ginmuru_meru より ・

 

ー 天のあみ ー

 

 

 

髪がさかだち、まぶたにおおきな火花がちった。

歯をくいしばり力をこめた両うでから、

ひとすじの光が頭上にのびて、宙をてらした。

「ぬ、ぬけた!」

刃からほとばしった光がしろい炎となり、ぼくをつつんだ。

 

まゆのような白い炎が、

八方からぼくをのみこむように、おしよせてきた。

この剣、やばいよ。

「おそれるな、自分でぬいた剣だ。てばなさず、つかいこなせ」

ハニワくんの声が、おもたい柄からつたわってきた。

「雷をはなつ刃には、雷をしずめる力もある」

な、なるほど。

ぼくは、ふかく息をすってとめた。

 

両手に柄があり、目の前にかがやく刃があった。

ぼくが剣をふりまわす、というより剣がぼくをふりまわして、

おもたい切っ先が、ぐるりと炎のうずに円をえがいた。

炎がよわまり、まゆがわれるように、闇がおとずれた。

うつろな暗黒ではない。

ゆたかなしじまが広がった。

ぼくの足もとには大岩、頭上に満天の星があった。

 

鈴音がひびき、いななく声でわれにかえった。

ふるびた小さなハニワ馬から、

目もさめるような白馬がおどりでた。

さなぎからかえったチョウのように、

白馬は、かろやかにひづめを鳴らした。

ハニワくんが、白馬にとびのった。

「ノマよ、わたしのノマ」

うれしげにいななき、白馬は宙へかけのぼった。

 

リンリンと鈴をならして天かける白馬のひづめから、

流れ星がこぼれおちる。

かろやかなひびきにこたえて、星々がまたたく。

リンリンリン……ジャリン!

すんだ音色が大きくみだれて、にごった。

ぐにゃりと夜空がまがった。

また、あいつだ。

あの大うなぎが星々を尾でうちはらって、大あばれしている。

 

あしたはない

むかしもない

とびらのむこう やみばかり

ないないづくしで

足がない

 

きらめく星々が雨のようにおちて、

空はまたうつろな闇にもどっていく。

大うなぎは、はじまりの闇に、この世界をもどしたいのか。

「星はめぐる。ときはながれる。あしたはくる」

馬上のハニワくんが、きっぱりいいきった。

 

雨のようにこぼれる星のはざまを、白馬はかけめぐり、

ハニワくんが片手を広げた。

ハニワくんの手には、いつしか

大きなつばさのような、銀のあみがたなびいていた。

こぼれおちた星々がたがいにむすびつき、

果てしないあみを、おりなしていた。

「天網恢恢 疎にして漏らさず」

(テンモウカイカイ ソニシテモラサズ)

ハニワくんが光るあみをなげた。

 

黒い大うなぎに小さな白い電気うなぎがまきつき、

大あばれしている。

そのこんがらがった怪物を、星のあみがとらえた。

銀の星々にふわりとくるまれ、

混乱しきっている大うなぎが、ふとしずかになった。

どさりと、星のあみが大岩におちてきた。

「剣をつかいこなせ」

ハニワくんが、ぼくをみつめた。

 

ぼくは、剣をみつめた。

剣なんかつかったことない。

でも、今この手で、ふりおろさなくちゃ。

そう自分にいいきかせた。

ハニワくんの言葉はときどきむずかしいけれど、

その言葉を、ハニワくんを、ぼくは信じていた。

星のあみの中ビリビリふるえている大うなぎに、

手にした剣を、力いっぱいうちつけた。

 

 

(2018.11.2)

 

 

 

 

 

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