ginmuru-meru ・STORY ハニワくんノート No.3・

 
 
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ハニワくん ノート

(No.3)

 

 

・ Twitter @ginmuru_meru より ・

 

ー とびらのむこう ー

 

 

 

かごめ かごめ かごのなかのとりは

いついつ でやる よあけのばんに

つるとかめが すべった

うしろのしょうめん だあれ

 

どこからか、うたがきこえる。

この声をきくのは、はじめてではない。

ずっとまえからしっている、きれいな声だ。

階段をのぼりきると、おおきな扉があった。

「あけるな危険」

 

とがった文字が警告している。

なぜ危険なんだろう?

「あけるな」

といわれて、すごすごひきかえすのか?

とびらのむこう、声がきこえる。

かなしげな、なきごえだろうか?

ひとの声ではなくて、馬のいななきのようだ。

ぼくは、ノブをまわした。

とびらをあけると、

懐中電灯の光をすいこむ闇また闇。

 

一歩ふみだした足が、どこにも着かない。

ぼくは、前のめりにつんのめった。

ノブをつかむ指に力をこめ、

かたほうの足でふみとどまろうとしたとき、

ぐらりと部屋がゆれた。

ぐらり、ぐらぐら。

「え、これ地震?」

あせって考えるよゆうもない。

とびらがブランコのように、ぼくを闇へとほうりこんだ。

 

わんわん!

頭上でなきさわぐシロの声が、

すぐちいさくなり、きこえなくなった。

ぼくは、下へ下へとおちていく。

手足がバラバラになりそう。

まわりにガラスのビーカーや試験管がちらばり、

いっしょにおちながらキラキラしている。

なんだよ、これ?

闇にうきあがってみえる、かけら。

ハニワ?

 

波にはこばれるガラス片のように、

こわれたハニワやら皿やら、

素焼きのうつわのかけらが闇にただよう。

ここは、古墳のあとに建てられた学校だったっけ。

そうだった、「ゆずりの丘」の上には大岩があって、

おさないころ、よくよじのぼって遊んだ。

あの大岩はどこにいっただろう、今はかげもない。

 

「そんなところにのぼっちゃバチがあたる」

おばあちゃんのいうことをきかず、よじのぼった大岩は、

日なたぼっこするカメの背中のように、

ポカポカあたたかくコケのにおいがした。

あの大岩……

工事でとりのぞかれてしまっただろうか。

さびしさと呼びあうように、馬のいななきがむねにひびいた。

 

闇をおちながら、目をこらすと、

いなないているのは、ちいさな素焼きの馬だった。

ぼくは、その馬に手をのばした。

「ああ、ノマ。わたしのノマ」

ハニワくんの声がひびいた。

「野山をともに旅した、わたしの道づれ」

そうか、ハニワくんの馬なのか。

丘の上、古墳でしずかにねむっていたんだろう。

 

「ゆずりの丘」には、

ずっと昔の王さま姫さまのお墓があって、

丘の大岩におねがいすると、

日照りに雨がふったり、

災いからかくまってくれたり、

きれいなお皿や器をかしてくれたりするのだと、

幼い日にぼくは、おばあちゃんから聞いたことがある。

 

あの大岩は、古墳の目印だっただろうか。

とおい日あそんだ景色を思いえがくと、

闇にちらばる星くずみたいな

ガラスやハニワのかけらがうずをまき、

きらきらあつまってきて、ひかるあみになった。

まるでぼくを受けとめるように、

あみはまるいかたちになった。

闇にうかぶカメの背中、あの大岩になった。

 

波間でカメの背にのせてもらうように、

大岩のおかげで、ぼくたちの落下はとまった。

「ノマよ」

ハニワくんがたてがみをなでると、

ちいさなハニワの馬はうれしそうにいなないた。

ほっとするまもなく、大岩がぐらぐらとゆれはじめた。

うねうねとぼくらをとりまき、うごめく黒いかげ。

あいつだ、あの大うなぎが、またあばれている。

 

ぼくらをここまでおいかけてきたのか。

「闇のあるじは、

この世がうまれる前から闇にただよい、

なにもない暗闇にもどりたがっている。

だから、地をゆさぶり、わざわいをおこすという」

そういって、ハニワくんが剣をぬいた。

大うなぎのしっぽがゆらりとのびて、

剣とハニワくんをなぎはらった。

 

ぼくもハニワの馬も、ふきとばされた。

ぼくらが大きな尾におしつぶされそうになったとき、

稲妻が大岩におちた。

まばゆい光のなか、ひとふりの剣が大岩にささっていた。

みあげると、黒い大うなぎに小さな白いうなぎがまきつき、

びりびりと稲光をはなっていた。

「で、電気うなぎ……?」

 

ふるえるぼくに、ハニワくんがこたえた。

「ふるき闇に光がうまれた、と言い伝えにあったな」

ものしずかなハニワくんの声に、おどろきがまじっていた。

大うなぎのしっぽが、またのびてきた。

「剣をとれ」

ハニワくんのさけび声で、

白くかがやく剣を力いっぱいつかむと、両うでがびりびりしびれた。

 

大岩にささった剣は、

ぼくがどんなにがんばっても、びくともしない。

「だめだよ、ぬけない」

「あきらめるな」

ハニワくんが、ぼくのうでに両手をそえてくれた、すきとおった手だけれど。

あたたかいなにかが、てのひらにながれこんだ。

稲妻といっしょにおちてきた剣から、白いひかりがはなたれた。

 

 

(2018.9.30)

 

 

 

 

 

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