蓮の花


オショロイ様の宵まつり。
蓮の花のあかりが照らすよ、
キュウリの馬とナスの牛。

しるべの炎の煙が
夕闇にたなびけば、
異界の門がそっと開いて、
星のしずく、風の足音が……

遠い道のりをようこそ、
お帰りなさい。


(旧暦の迎え盆の日に)


うつりにけりな


花の色は
うつりにけりな
いたづらに
わが身世にふる
ながめせしまに

小野小町
(小倉百人一首 9番 『古今集』春・113)

Color of the flower
Has already faded away,
While in idle thoughts
My life passes vainly by,
As I watch the long rains fall.
(Ono no Komachi)

( Clay MacCaule版 1917年出版 )
Hyakunin Isshū – Wikisource, the free online library
Petals and Moon — 英語で百人一首 (petals-and-moon.blogspot.com) 様より


1917年出版の英訳「百人一首」では、
「花の色は」桜の花に限定されない
“Color of the flower”
と表現されているそうだ。

写真は、公園で撮ったノヴァーリス。
薄紫の青薔薇。
青い薔薇は存在しないはずだったが、
品種改良を重ねて誕生した品種で、
ノヴァーリスの幻想小説「青い花」に
ちなんで名づけられたという。

花の色も花の名も、
古今東西さまざまに移ろって
その移ろいの有り様は、趣深い。


花の色は – レモン水 (ginmuru-meru.com)


天の原(Bing Image Creator)


天の原 ふりさけ見れば 春日なる
三笠の山に 出(い)でし月かも
            阿倍仲麿

( 小倉百人一首(7番)『古今集』羇旅・406 )

哭晁卿衡
   李白
(全唐詩·卷184)

日本晁卿辭帝都
征帆一片繞蓬壺
明月不歸沈碧海
白雲愁色滿蒼梧

(書き下し文)
日本の晁卿(ちょうけい)帝都を辞し
征帆一片(せいはんいっぺん)蓬壷(ほうこ)を遶(めぐ)る
明月は帰らず碧海(へきかい)に沈み
白雲愁色蒼梧(そうご)に満つ

(通訳)
日本の晁衡卿は帝都長安を離れ
帆を張った舟は蓬莱の島々をめぐって行った。
明月のような君は青い海に沈んで帰らず
白雲がうかび、愁いが蒼梧に満ちている。

>益久島(現在の屋久島)に向けて出帆した4隻のうち、仲麻呂や清河の乗船した第1船が暴風に遭って南方へ漂流した。彼が落命したという噂を伝え聞いた李白は「明月不歸沈碧海」の七言絶句「哭晁卿衡」を詠んで仲麻呂を悼んだ。しかし、仲麻呂が乗船していた第1船は、以前平群広成らが流されたのとほぼ同じ漂流ルートをたどり、幸いにも安南に漂着していた。


李白:哭晁卿衡 – Web漢文大系 (kanbun.info)

阿倍仲麻呂 – Wikipedia より引用


( 2024.4.5 イラスト作成 Bing Image Creator +加工 )