初音を待ちわびて

ほととぎす鳴きつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる
(小倉百人一首 81番 後徳大寺左大臣 『千載集』夏・161)
          

時代のせいにしてメルヘン捨て去るのは
寂しいことだよ。

初音を待ちわびて夜を明かす。
そんな風流もいいじゃない?

雨あがり

土砂降りの雨がやみ
晴れ間がのぞいた。

虹の太い柱が
東天へ伸びていた。
窓辺から身を乗りだし
七色の輝きを追いかけたら、
大きなアーチが電線をまたいでいた。

東の虹が消えて、
西は灰色雲の地平。
ほんのひととき夕ぐれが
橙やバラ色の光の波で
棟々の壁を照らし、
淡い宵闇へと移ろった。

          

(2019.10.25 Twitter より)

三日月の夜

灯りのついていない部屋の窓、
傾いた三日月がのぞいていた。
淡くひかる惑星の影をまとい、
十字のかがやきを闇に放って。

ぽっかり浮かぶ小さな三日月、
もっと小さな星つぶを連れて、
ほほ笑むように窓からのぞく。
飛行機の点滅灯が弓を横切る。

灯りのついていない部屋の窓、
ほほ笑むように。

              

(2019.11.30 Twitter より)