くろうさぎのクリスマス


くろうさぎは、おおいそがし。
こんやじゅうに、たくさんのおくりものを
くばらなくては。
さむいきたのくにで、くろうさぎは、
みずうみのこおりのかけらをすくって、
まほうびんにいれました。
「こおりがとけないうちに、はやく
かえってきてね」
うちでまっている、しろうさぎが
そうおねがいしたからです。


「さあ、しごとはおわった」
ゆきのはらにそりをはしらせ、
もりのうちにかえろうとしたとき、
くろうさぎは、こごえたいちわの
つばめをみつけました。
「みなみのくにまで、もうひとっぱしり!」
そりをひくトナカイが、
よぞらにすずのねをひびかせ、
まいあがりました。
とべないつばめをのせて……

やまをこえ、かわをこえ、
さむいきたのくにから
あたたかなみなみのくにまで、
とおくとおくそりはかけて、
ようやくつばめは、なかまのもとへ。
「よかったね、まいごさん」
くろうさぎは、ほっとしました。
でも、はしりつかれたトナカイは
「もううごけないですよぉ」
と、おはなをまっかにして
あせびっしょりです。

「つめたいこおりで、げんきをだして」
くろうさぎは、まほうびんの
こおりのかけらを、トナカイにそっと
さしだしました。
こおりはすぐにとけて、
きれいなみずになりました。
トナカイは、つめたいみずをのんで、
しゃんとたちあがっていいました。
「もうすぐよがあける。はやく
うちにかえりましょう」

ほしがきえてあさひがのぼるころ、
トナカイのそりは、もりにつきました。
「おかえりなさい」
しろうさぎが、まっていました。
「こおりはとけてしまったよ。
すまないが、かわりにこれを」
くろうさぎのてには、いちりんのはな。
「まあ、ひとあしはやい、はるのかおり」
しろうさぎは、にっこり。


「みなみのくにに、よりみちしたよ」
くろうさぎのことばにうなずいて、
しろうさぎは、テーブルのグラスに、
はないちりんをかざりました。
「みずうみのこおりをうかべた
このグラスでふたり、かんぱい
するつもりだったけど」
テーブルには、おいしそうな
あさごはんがならんでいます。
「なんてやさしい、はるのいろ」


みなみのくにや、きたのくに、
ひがしのくにに、にしのくにでも、
とどけられたおくりもののつつみが、
そろそろ、ひらかれているでしょう。
たくさんのえがおをおもいうかべ、
おなかがいっぱいになった
くろうさぎとトナカイは
あくびをしました。

おやすみなさい、みなさん、
よいゆめを……

(2020.12.25 Twitter より)


宝さがし

落ちた破片から水紋がひろがる。
砂に風の跡がゆるく記される。

ガラス瓶に詰めた手紙を波間に浮かべる。
種を結んだ風船を風に流す。

もう言葉がみつからない、
そこから先の言葉をみつけるのが宝さがし。

潮の流れは、どこに向かう?
風の流れは、どこに向かう?



(2018.11.23 はちみつみかん BLOG アーカイブ より)


赤いランタン

東天にまたたく火星
かけ足で来る日暮れ
ぽつりぽつりと灯る
小さなランタンたち

甘いもの好きな妖精
いたずら好きな小鬼
赤いランタンを手に
招くよ、さぁあそぼ

(2020.10.22 Twitter より)