水の器(絵 Bing Image Creator)

私は土地の長の娘。
幼い頃から人々に
「水の器」と呼ばれ、
大切に育てられました。

ある雨のふらない夏、
私は白い羽の衣をまとい、
水の神に捧げられました。
水の神が訪れたなら、
甕のお酒でもてなすのです。
私はふるえていました。
神の姿をみて
もどってきた「水の器」は
誰ひとりいなかったから。

三日月の光がおりてきて、
誰かが私を呼びました。

月のようにかがやく
剣をかざし、
私の前に立ったのは、
ひとりのみしらぬ旅人でした。
水の神があらわれ、
いくつもの鎌首をもたげ、
私を呑みこもうとしましたが、
旅人はあざやかな剣さばきで
うねる首をかたはしから
切り落としました。
水の神としてあがめられていたのは、
おそろしいオロチだったのです。

たおれた水の神の尾から、
氷のようにかたく
星の雨をしたたらせる剣が、
ひとふりきらめき、あらわれました。
オロチを退治した旅人は
その剣を手にとり、にっこりしました。
「ケガはないか?ぶじでよかった」
やがて彼は、この地に館を築きあげ
「水の器」を妻にしました。

八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに
八重垣つくる その八重垣を(古事記)

あぢさゐの八重咲くごとく
弥(や)つ代にをいませ我が背子
見つつ偲はむ(万葉集)

(水の器と呼ばれて
今は名も忘れられた娘と、
ふらりふらり各地に足あとを
残した風来坊のお話です)

(引用)
古事記・日本書紀歌
万葉集(4448 橘諸兄)

※ hydrangea(アジサイ=水の器)

( 2023.6.5 Twitter より )
( 2023.6.5 イラスト作成 Bing Image Creator )


ほのあかり


生まれる前は、
お魚や鳥さんや
馬や牛、豚や羊だったの。

この世を去ったら、
舟で星の海に出て、
天の川の星粒になるの。
そして空から見守り、
雨といっしょに
地上に降りて、
穀物に宿って実るから。

また会いましょう、
それまでごきげんよう。
お元気で…


(いにしえのメルヘンへの仮説)


( 2023.4.1 Twitter より )


ほのあかり(Bing Image Creator) – レモン水 (ginmuru-meru.com)


白鳥の鷺坂山の松蔭に

白鳥(しらとり)の
鷺坂山(さぎさかやま)の
松蔭(まつかげ)に
宿(やど)りて行(ゆ)かな
夜(よ)も更(ふ)けゆくを

白鳥 鷺坂山 松影 宿而徃奈 夜毛深徃乎

右柿本朝臣人麻呂之歌集所出
(柿本人麻呂歌集より)
(万葉集 巻9-1687 雑歌 鷺坂作歌一首)


白鳥(天の川に橋をかける伝説)の
名をもつ鷺坂山(逢坂山を連想する)、
その松(待つ)の枝影(の天の川)に
(ひととき降りている遠い人の魂よ)
更けゆく夜の旅路だ、さあ宿っていこう。

というニュアンスの歌だろうか……
出典は万葉集、柿本人麻呂歌集
(柿本人麻呂の歌なのかは定かでない)

松陰に宿って行かねばならぬ旅人は、
万葉歌人(本人)であるのと同時に、
樹上の天の川をみあげて想う
遠い誰かの魂だろうか。

更けゆく夜の静けさが旅情と
はるかな慕情とを伝える。
松の枝は野趣に満ちながら、
繊細な星の伝説を瞬かせる。
(白鳥、鷺、宿る、といった
詩的効果の高い言葉が並ぶ)


( 2023.3.8 Twitter より )


白鳥の鷺坂山の松蔭に(Bing Image Creator) – レモン水 (ginmuru-meru.com)

待ちつつぞ – レモン水 (ginmuru-meru.com)


オリオン座


星座の暗幕をゆらす風。
ここに居るのは誰だったろう、
ハニワくんなのか僕なのか
わからなくなった……


( 2023.1.17 Twitter より )