女神の呼びかけ


13日の金曜日。
どこかで黒猫みかけるかな?

13、西洋では不吉とされる数。
金曜日はフライディ、
北欧の豊穣女神フレイヤにちなむ。
黒猫は、魔女の使いだっけ。

メソポタミア神話関連か、
「皿の数が足りなくて宴に招かれなかった女神、
その呪いで病気になったケレト王の娘フルリヤ」
という記述をみかけた記憶?(本かWikipedia)
古い女神。
( ※アーシラト – Wikipedia 2023.4.28 )

皿がでてくる……
皿の数。
宴にそろえる皿。

豊穣の器、豊穣女神……
聖杯。
仏(弘法太子)の鉢。
かぐや姫の難題。

ダグザの豊穣の大釜・竪琴・棍棒。(妄想脱線?)

川上から流れてくる器。
依頼した翌朝、大岩に並べられている器。
恵みの器。豊穣、慈雨。

はちみつみかん ginmuru-meru
はちみつみかん ginmuru-meru
(水源の女神、器、巨石文化)

あれ、これは荒れ地王の物語の原型?
!(‘◇’)?
うろ覚えだ……うろ覚えのまま
ファンタジーに持ち込んだ方が
いいかも……

番町皿屋敷の例は、
皿の数が足りなくて?この伝説も
「皿・呪い・病み衰える城主」で
定型なんだなぁ……
あ、井戸も出てくる。水源……

お菊という女性名からの連想……
日本の菊の紋によく似たデザインの紋章が、
中東のイシュタル門に描かれていたが、
これはナツメヤシの葉を上から描いた形で、
大女神イシュタルの印なのだとか。

宴に招かれなかった古い女神の呪い、
眠り続ける茨姫、暁姫。

忘れられた老いた女神、
眠り続ける年若い女神。
この両者は等しい存在?

過去と未来、茨に包まれて時がとまる城(現在)
糸車は、紡がれる時・命の比喩。
三相女神のメッセージ……
「忘れないで」
「思い出して」
「見つけて」

古代の大女神は、
畏怖の念から名前を隠されていた、
とたしかケルト神話の本で読んだことがある。
ほんとうの名を記されなかった女神。

「私を忘れないで」(過去)
「私を思い出して」(現在)
「私を見つけて…」(未来)

この女神の呼びかけに応えると豊穣の恵みがある。
慈雨がもたらされる。

豊穣の大女神は、
月(満ちる月、満月、欠ける月)の三相。
乙女、美しい婦人、賢い老婦人の三相。
時を紡ぐ三姉妹、
泉と宇宙樹をまもる三姉妹、
のバリエーションもある。
日本の民話では、山姥に面影が残る。
アマテルとシタテルの姫神?
オグラ姫とワカ姫?
ミズハノメとクラミツハ?
うろ覚え……

「私はかつてあり、今もあり、
これからもある全てである。
そして私のヴェールを
人間が引き上げたことはない。
私がもたらした果実は太陽である。」
6世紀半ばのプロクロスの著述によれば、
サイスの神殿の碑文に
こう刻まれていたのだという。
(by Wikipedea)
日本の地方豪族の古墳時代(後期)頃の著。

ハニワくんと相撲 – レモン水 (ginmuru-meru.com)

Hey, diddle, diddle,
  The cat and the fiddle,
  The cow jumped over the moon.
  The little dog laughed
  To see such sport,
  And the dish ran away with the spoon.

マザーグース Hey, diddle, diddle より。
お皿は逃げ去った……月と星の宴から。

Hey, diddle, diddle-Mother Goose – レモン水 (ginmuru-meru.com)

13日の金曜日
(じゅうさんにちのきんようび、英語: Friday the 13th)
とは、英語圏の多くとドイツ、フランスなどの
迷信において不吉とされる日である。
13日の金曜日 – Wikipedia

( 2019.12.13 Twitter より )


お皿は逃げたので、宴の器がたりない。
古い女神の残像、マザーグースに……
深読みしすぎかな……?

ハニワくんとオリオン座のイメージを
繋げたい。
あかつき姫(アウローラ)とオリオンには
恋の神話あり。
日の出の地平線を象徴する獅子(猫)と
あかつき姫(茨の城の眠り姫)とが繋がる。
「ののさま」わらべ歌
「ののさまどちら いばらのかげで
 ねんね(子猫)をだいて花つんでござれ」

( 2019.12.17 Twitter より )


夜明けの猫、黄昏の猫。
未来、過去。

犬のシロはどうしようかな……
舟型の棺に首長と犬とが埋葬されてた
弥生時代の遺跡があったっけ。

( 2019.12.18 Twitter より )


たそがれどき、暗くなった路で
見知らぬ館にたどり着いたら、
おばけ屋敷で、山姥いたり、
派手におっかないのが面白そう、と
脱線したことを考える。
あかんあかん、
不思議な博物館でなくちゃ……
きれいなお姉さんがお茶淹れてくれるとか。

( 2020.1.21 Twitter より )


(2)星座の切符


ことん、ことん、水車がめぐる。
暗闇の水音は、どこからどこへ流れていくのか。
歩きつづけた先に、明かりがぽつり。
近づくにつれ、明かりはゆらゆら大きくなった。
木立が風に鳴り、空気は真冬の冷たさだ。
夜空を照らし、かがり火が燃えている。
かがり火に浮かぶのは、ひとり舞う誰かの影。

ののさまどちら いばらのかげで
ねんねをだいて はなつんでこざれ

なつかしい歌声……この声は……

illust 2021©fairy-scope.com

大岩の上で舞う美しい姿は……
ああ、そうだ、思い出した。
ハニワくんと旅したときに出会った、水瓶の姫。
あの大岩は、工事で失われたはず。

「ゆずりの丘」には、
ずっと昔の王さま姫さまのお墓があって、
丘の大岩におねがいすると、
日照りに雨がふったり、
災いからかくまってくれたり、
きれいなお皿や器をかしてくれたりするのだと、
幼い日にぼくは、おばあちゃんから聞いた。

その大岩に立ち、ゆれるかがり火とともに、
たおやかに歌い舞う姫……この声、この横顔は、
「ふるさと博物館」の受付けのお姉さんに
そっくりじゃないか。

ミヤァ……
姫の歌と舞いが、ぴたりと止まった。
黒い子猫が大岩にとびのり、甘えるように鳴いた。
姫は、子猫をだきあげた。
ミヤァ……
ふと姫がぼくを見て、にっこりした。
「また会えましたね」
なつかしい、すきとおった声……
「あなたの助けがほしくて、使いを出したのです」
「え?」
姫の柔らかなまなざしが、ぼくをしっかりとらえて離さない……
ハニワくんはどうしたんだろう、と不思議に思った。
「ぼくの助け、ですか?」
水瓶の姫に仕えて助けるのは、
ハニワくんの役目のはずじゃないか……

姫は身をかがめ、腕にだいた子猫をおろすと、
かわりに大切そうにひとつの水瓶をささげ持った。
「あなたをここに導いたせせらぎは、この先、
大きな星の川へと流れつきます。
その川の向こうにいる太陽の姫に、
この器でくんだ川の水を、届けてほしいのです」
大岩の上の姫がひざをつき、さしだす水瓶を、
ぼくは両腕をいっぱいにのばし、受け取った。
かがり火が照らすその水瓶には、
花びらのような肉球のくぼんだ跡が点々とある。
丸みのある胴、くびれた注ぎ口……
これ、この水瓶、もしかして、
博物館の展示ケースに並んでいた、
ブルーグレイの須恵器?

ずしりと手ごたえのある古い水瓶を、
ぼくはまじまじと見つめた。
「太陽の姫は、眠りの病いにかかっています。
あなたが水を届ければ、きっと姫は目覚めます」
「きっと、と言われても……」
ぼくは大岩の上の姫を、とまどって見上げた。
「流れにそって行けば、わかります」
姫はほほえんで、暗い夜空に目をやった。
ぼんやりと白く天の川が流れ、いくつもの星が
きらめいている。
オリオン座、双子座……
ミヤァ……
黒い子猫が、身軽に大岩から飛びおりて、
ぼくの足にじゃれつくと、するりとかけだした。
「あ、まってくれ」
ぼくは、空っぽの水瓶をしっかり抱いて、
子猫を追った。
「わかりました、行ってみます」
助けてほしいと頼まれて、姫にそう返事したものの、
まったくおぼつかないままに。

子猫がかける、水音がとぎれずひびく。
ぼくはひたすら追いかける。
気がつけば、暗闇に大きな水面がひろがり、
目の前できらきらと波立ち、光っていた。
(あなたをここに導いたせせらぎは、この先、
大きな星の川へと流れつきます)
「これが、星の川?」
岸辺に、いくえもさざ波が寄せてくる。
「暗くて向こう岸がみえやしない」
大きすぎる川幅におどろき、あたりを見まわすと、
舳先に灯をともした小舟がいっそう、
渡し場につながれていた。小舟のかたわらには、
マントにすっぽり身を包んだ渡し守が、
のっそりたたずんでいる。
「あの、向こう岸までのせてもらえますか?」
声をかけると、マントの男は不愛想に一言。
「切符はあるか?」

「切符?え、えっと……これなら?」
困ったぼくは、上着のポケットから、
黄緑色のチケットをひっぱりだした。
オリオン座をしるした小さな紙片だ。
渡し守は、それをながめて首をふった。
「だめだな……切符の行く先がちがう」
「頼まれごとがあって、ぼくはなんとか
この川をわたりたいんです」
「向こう岸には簡単に行けるものではない」
男の顔は、マントにかくれて見えない。
「切符がないと舟には乗れませんか?」
ミヤァ……
黒い子猫が、いっしょに頼むように鳴いた。
ミヤァ……
子猫が渡し守の足元にするりと寄りそって、
ぶあついマントのひだをゆらした。
ミヤァ……
しばらく沈黙してから、ぼそりと渡し守が言った。
「どうしても舟に乗りたいなら、相撲の勝負をしろ。
もし私に勝ったら、向こう岸につれていく」

「ほ、ほんとですか?挑戦します」
ぼくは両腕にかかえていた水瓶を上着でくるみ、
渡し場からはなれた地面にそっと置いた。
もし割れてしまえば、姫が悲しむだろうから。
「頼むよ、これしばらく見ててくれ」
子猫に声をかけると、ミャーと良い返事。
「ぜったい勝ってやる、いきますよ」
「くるがいい」
渡し守はマントをぬごうともしない。
のっそりたたずみ、ぼくなど相手にしていない風情。
それでもかまうもんか……他に道がないのなら?
「本気でいきますよ」
ぼくは、力いっぱい足を前に踏み出した。


(1)たそがれの館


学校からもどったら、
まっくらなぼくの部屋の窓から、
かたむいた三日月がのぞきこんでいた。

ののさまどちら ねんねをだいて
いばらのかげで はなつんでござれ

やさしい歌が耳をくすぐる。
だれ?
窓からみおろすと、
金色の三日月をうかべた目で、
首をかしげ、ぼくをみつめてくる黒い子猫。

子猫がほそい声で、ミヤァとあまえるようにないた。
おなかがすいているのかな。
ミルクがほしいのだろうか。
ぼくは子猫の声にさそわれ、おもてに出てみた。
黒いかげがしなやかに通りをすべる。
どこにいくのか、金の三日月をうかべた目が、
ふりかえってぼくを見つめる。
あれ、ついてこい、だって?

どこまでいくのか、黒い子猫。
ぼくをふりかえりながら、
街をぬけ、川をわたり、坂道をのぼって。
いつしかここは、ゆずりの丘。
かたむいた三日月がてらす丘。

ここは、昔々の古墳があった場所。
今では新しい学校が建っている…… はずなのに、
あれ、こんな景色だったっけ?
灯のともる館が一軒。

ことん、ことん、
館のかたわら水車がまわる。
こんな小川、流れていたっけ?
ことん、ことん、
水車のひびきにまねかれて、
ぼくは館の前にたたずんだ。
「ふるさと博物館」
墨書きした表札が出ている。
おかしいな、こんな博物館は知らないぞ……
ミヤァ、と黒い子猫が扉にすりよった。
早く開けろとうながように、
ぼくを横目で見つめてくる。
金の三日月をうかべた緑の目。
ミヤァ……

「こんばんは、いらっしゃいませ」
古びた木の扉をあけると、
受付けのお姉さんがほほえんだ。
「チケットはお持ちですか?」
え?そんなの持ってるわけないだろ。
そもそも財布はあったっけ?
あわてて上着のポケットに手をつっこむと、
記憶にない小さな紙の手ざわり……
なんだっけ、これ?
とりだしてみると、黄緑色の切符のようだ。
オリオン座そっくりの点模様だけ記されている。
お姉さんはその切符を手にとると、
「チケットを拝見しました」
とうなずき、またぼくにそれを返した。
「あの、猫もいっしょで大丈夫ですか?」
「はい、チケットを大切にお持ちくださいね」
お姉さんがにっこり。
どこかで会った気がするこの笑顔、この声……
どこだっけ?誰だっけ?
「展示はおくの部屋にございます。
 どうぞ、ごゆっくりご覧ください」
思い出せず、うながされるままに、
ぼくは展示スペースをぼんやりながめた。
黒い子猫が足元にじゃれつきながら、
すべるように先を行く。

ここは、ゆずりの丘。
昔々の古墳があった場所。
「ふるさと博物館」の
ガラスケースに並んでいるのは、
昔々の人々が使っていた器や皿、埴輪など。
「おや?」
(古墳時代、須恵器)と説明書きされた、
くすんだブルーグレーの水瓶の前で、
ぼくは立ち止まった。
水瓶のまるい胴、くびれた注ぎ口に点々と、
花びらが散るように、いくつもくぼみがある。
あたかも猫の肉球を押しつけたような。
そう、まるで焼く前のまだ柔らかな土器に、
いたずら猫が足跡を残したような?
ミヤァ、と黒い子猫が鳴いた。
「あ、あれ?」
ガラスケースの水瓶の肉球模様がにじんで、
ゆらいで、点々と黒い足跡がふえはじめた。
その足跡は、ガラスケースから出て、展示室の床におり、
見えない猫が忍び歩くように、するするとふえていく。
黒い子猫がためらいもなく、その足跡についていく。
「おい、ま、まってくれよ」
ぼくは、子猫と足跡とを追いかけた。
ほのぐらいスペースの奥へ、奥へと……

やがて肉球の跡は、
分厚いビロードの垂れ幕へと消えた。
天上から床まですっぽりとどく、大きな垂れ幕だ。
紫がかった黒びかりのひだが、ゆるく波打つ。
その垂れ幕いちめん、白い星模様が散っていた。
あわくかがやく天の川のようだ。
天の川をはさんで向き合うふたつの星座、
双子座とオリオン座の星々がくっきり浮かぶ。
ぼくのチケットに記されたオリオン座と同じ形だ。
ビロードの垂れ幕は両側から閉じられていて、
その真ん中の2枚の布の合わせ目に、
白いメモが銀のピンでとめられていた。

「ここはどこ?私はだれ?今はいつ?」

流れるようなインク文字で、そう書いてある。
ぼくは、そのメモを読み、銀のピンを外した。
小さなピンでとめられていた2枚の重い布は、
はらりと分かれ、見知らぬ奥への入り口を開いた。
ぼくは、謎の質問メモを上着のポケットにしまい、
足元の黒い子猫をみた。
ミヤァ……
「よし、行くか」
子猫の両目の金の三日月が、きらりと光った。
垂れ幕の向こうは真っ暗やみで、
足元を照らす星灯りのように、
肉球の跡が先へとつづいていた。
黒い子猫がかけだすと、そのしなやかな影が
ほのかな月光のように、ぼくをいざなった。
ぼくは、子猫と足跡とを追いかけた。

ののさまどちら ねんねをだいて
いばらのかげで はなつんでござれ

闇をくぐり、ふしぎな歌声が、
またどこからかひびいてくる……