白鳥の鷺坂山の松蔭に

白鳥(しらとり)の
鷺坂山(さぎさかやま)の
松蔭(まつかげ)に
宿(やど)りて行(ゆ)かな
夜(よ)も更(ふ)けゆくを

白鳥 鷺坂山 松影 宿而徃奈 夜毛深徃乎

右柿本朝臣人麻呂之歌集所出
(柿本人麻呂歌集より)
(万葉集 巻9-1687 雑歌 鷺坂作歌一首)


白鳥(天の川に橋をかける伝説)の
名をもつ鷺坂山(逢坂山を連想する)、
その松(待つ)の枝影(の天の川)に
(ひととき降りている遠い人の魂よ)
更けゆく夜の旅路だ、さあ宿っていこう。

というニュアンスの歌だろうか……
出典は万葉集、柿本人麻呂歌集
(柿本人麻呂の歌なのかは定かでない)

松陰に宿って行かねばならぬ旅人は、
万葉歌人(本人)であるのと同時に、
樹上の天の川をみあげて想う
遠い誰かの魂だろうか。

更けゆく夜の静けさが旅情と
はるかな慕情とを伝える。
松の枝は野趣に満ちながら、
繊細な星の伝説を瞬かせる。
(白鳥、鷺、宿る、といった
詩的効果の高い言葉が並ぶ)


( 2023.3.8 Twitter より )


白鳥の鷺坂山の松蔭に(Bing Image Creator) – レモン水 (ginmuru-meru.com)

待ちつつぞ – レモン水 (ginmuru-meru.com)


相撲、伎楽、鷺舞、七夕


相撲についてネット検索をするうち、
古代人の輪廻転生観(人→穀物の種)に触れ、
「祖霊たち=穀物の種=天の川の星々」
と、ふいに納得し
「天の川=天と地を結び、天の恵みを地におろす」
「トヨ(樋)川だー!」
とイメージふくらみ(古代人の発想に気づき?)
心騒いで肝心の「相撲」を忘れ……

ハニワくんのお話、どうしようかな……

古代大和朝廷では新年と七夕(お盆)に
相撲の神事で豊穣を祈願した。

天の川=豊穣の川
天の川のほとりの偉丈夫(オリオン座)
相撲神事=オリオン座との関連
地上の猛者が、相撲神事をとおして
天上の勇者(オリオン座)への供物となる(奉納される)
(天地照応の世界観)
地上の生命力が天上の星に反映される
=豊穣祈念

鳥獣人物戯画 – Wikipedia

指相撲、草相撲、
折り紙のお相撲さんのトントン相撲
(古代の神事の遊戯化)

伎楽 – Wikipedia

伎楽には力士が登場する。

白鷺の木を啄(く)ひて飛ぶを詠める歌

池神の
力士儛(りきじまひ)かも
白鷺の
桙(ほこ)啄(く)ひ持ちて
飛び渡るらむ

詠二白鷺啄レ木飛一一歌
 池神 力士儛可母 白鷺乃 桙啄持而 飛渡良武 

長意吉麻呂
万葉集(巻16-3831 雑歌)

この歌の白鷺、白鳥座との関連はないのかな?
と思ったけれど、日本では白鳥座を「白鳥」と
関連付けた伝承はなさそう……Orz

星・星座に関する方言 – Wikiwand

(七夕のカササギの橋とは関連づけてる)
白鷺の語については、
白鳥の表記で白鷺を指す場合があったらしい。
(ヤマトタケルが死後
白鳥=白鷺になって飛び去った伝説など)

力士舞の歌 – 古事記・日本書紀・万葉集を読む(論文集) (goo.ne.jp)
「古事記・日本書紀・万葉集を読む(論文集) ヤマトコトバについての学術情報リポジトリ 加藤良平」(2013.6.2 2017.8.18 加筆)

>「池神」は、ヒノクチマモリ(樋口守)、ミトサギ(水門鷺)と呼ばれるアオサギ(蒼鷺)のことを言っているのであろう。(上記より引用)

>実際、アオサギとシラサギが語らうように見える光景は容易に見られる。あるいは、相撲のにらみ合いのようにも見受けられる。その後、シラサギだけが飛んでいき、アオサギだけが残るということもままあるであろう。アオサギは樋口守、水門鷺だから、水門を守るために残ったというのが由縁として語られているらしい。この歌の収められている巻十六は、「由縁ある、并せて雑歌」の巻である。動かずに鳴くばかりで、鳥なのに飛んだり跳ねたりせずに「舞」うと表されていて面白い。マフ(舞)ということばは、オドル(踊)と違って旋回運動を表すとされ、マハル(廻)と同根である。(上記論文より引用)

アオサギは樋口守(ヒノクチマモリ)だという。
用水路の注ぎ口である田の守り神
=天の川の注ぎ口である田の守り神?

樋口守(ひのくちまもり)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)

田のサギにも多様な種類がいるのだった。
シラサギ、アオサギ……
検索するとシラサギは集団で営巣・子育てする習性。
万葉短歌の「枝をくわえて空を飛ぶ」姿は、春の巣作りの頃だろうか。
検索でシラサギ集団の画像をみると、
「これは群れて天の川にも橋を架けそうな鳥さん」
と素朴な感想が浮かぶ。

銀河に橋をかけるあの鳥の正体とは?田園の守り神・鷺のミステリー《後編》(季節・暮らしの話題 2020年08月27日) – 日本気象協会 tenki.jp

このブログさんの記事、面白いな。
(*^-^*)

鷺舞 – Wikipedia
>唄方が唄う歌詞である(歌詞は津和野町観光協会HPより引用した)

橋の上におりた 鳥はなん鳥
かわささぎの かわささぎの
ヤーかわささぎ さぎが橋を渡した
さぎが橋を渡した
時雨の雨に ぬれとりとり
ヤーかわささぎ さぎが橋を渡した
さぎが橋を渡した

前述したように、この歌詞は七夕伝説がモチーフとなっており、かわささぎとは鵲とされる。(上記リンクWikipedia「鷺舞」より)

中国の七夕伝説「カササギ」が
京都でみない鳥ゆえにサギがあてはめられ、
祇園祭を発端として各地に伝わった。
七夕と縁の深い相撲神事と鷺舞。
力士と白鷺とを詠んだ万葉短歌。

鷺舞 – Wikipedia
津和野町・津和野大橋北側の鷺舞の像

もし池神=水辺のサギ(樋口守)ならば、
サギが翼を広げ片足立ちするポーズ
(鷺舞でも再現されている)が、
四股を踏む力士の姿を連想させるゆえ、
「力士儛(りきじまい)」に見立て
万葉歌が詠まれたのだろうか、と夢想。
水辺のサギはしばしば片足で立つ。
力士儛(腕を広げ片足を上げるポーズ)は、
天の河辺のオリオン座に重なる。


( 2023.3.2~3.5 Twitter より )


梅にうぐいす


幼い頃に読んだ絵本に、
「開けてはいけない座敷に梅とうぐいすが…」
という昔話があってタイトルを思い出せず、
「隠れ里」「まよひが」
等で検索しても見つからず、
あきらめかけていた。

「うぐいすの宿」
というシンプルな語が
思い浮かび、ようやくヒット。
(^-^)
見るなの座敷 – Wikipedia

梅と鶯の取り合わせは、
中国文学(唐代)の影響が濃いらしく、
日本では飛鳥時代以降、万葉集などで
梅に鶯の和歌が詠まれ、古今和歌集にも
受け継がれた、と。
「うぐいすの宿(見るなの座敷)」は
飛鳥時代以降の貴族文化の流れを汲み、
昔話としては新しい系譜だろうか?

梅に鶯 うめにうぐいす 意味・由来 (worldfolksong.com)

とはいえ古典文学も昔話も
「今は昔」の世界観ではあり、
どこの何を基準に、
「新しい系譜」と考えればいいのか、
よくわからなくなる……

(梅にうぐいす、の美意識が飛鳥時代以降、
大和の貴族文学の中で育まれたとして、
東日本に分布する「見るなの座敷」との
関わりについて、断定は出来ない)
(何かの形で昔話へと
伝播はしたのだろうけれど)

(梅にうぐいすの美意識が
中国の唐代文化に由来し、
大和の貴族文学を源流としても)
東日本の昔話として「見るなの座敷」が
広く伝わり根付いたのは、
寒冷で春の到来が遅い雪国の風土で、
春を告げる「梅にうぐいす」モチーフが、
人々に好まれ物語られたからではないか。
(お手玉遊びのわらべ歌も)※

※よも(四方)のけしきを
 春とながめて
 梅にうぐいす ほーほけきょ

よも(四方)のけしきを – レモン水 (ginmuru-meru.com)


(追記)
幾つもの座敷があり、障子をあけると
部屋ごとに四季の風景が広がっている
世界(ひとつの屋敷に四季が同時存在)
は、北欧等の常世信仰を彷彿とさせる。
たとえばオレンジは花と果実を同時に
つけるので黄金の林檎、
常春島の果実とみなされた。
12ヵ月より余る禁断の13番目の展開も
西洋風かも?


( 2023.2.20 Twitter より )


星空の恵みを地におろす


sokenk115_1.pdf (andrew.ac.jp)
当麻寺を訪ねて 井本栄一
(桃山学院大学総合研究所紀要 
第25巻第1号87-95p. 1999-09-30 )

「相撲 新年 七夕 穀神」
など思いつく語で検索したら、
こんな論文が見つかった。
ところどころわからない部分もあるが、
面白くて一気読み。
著書多数の権威ある学者さまらしい。
井本英一 – Wikipedia

上記論文「当麻寺を訪ねて」では、
相撲と穀霊とユーラシアに伝わる
豊穣儀礼について詳述され、
とても読み応えがあった。
(一読しただけでは理解しきれていない)
豊穣儀礼と天上
(日月・星・天の川・星座)
との関りについては触れられていなかったが
(それを検索で探していた)
異界・冥界下り・再生と仏教を論じて奥深い。

上記論文では、
3世紀中国の「問礼俗」を例に、
鶏→犬→羊→豚→牛→馬→人→穀物
の順に魂が転生するという
古代の死生観(輪廻転生)が紹介されている。
人の魂が穀物に宿る、という想念は、
宮沢賢治の辞世の句にもみられる。

病(いたつき)の
ゆゑにもくちん
いのちなり
みのりに棄てば
うれしからまし

また賢治の第一詩集に収められた詩
「春と修羅」の
(このからだそらのみじんにちらばれ)
という言葉には、
「宙への供物」として転生する
文化英雄的イメージが含まれている。
銀河の星や稲穂を詠い、
輪廻転生を下敷きとする
宮沢賢治の詩や短歌の世界は、
「女神※がこぼした小麦の種=天の川」
という古代人の神話にも通底する。

※女神=デメテルやイシスなど大地母神
(娘や夫など愛する者を失い、
彷徨い歩く女神が手にした袋から
こぼれた麦の種が天の川だという)

詩や短歌のみならず
星の世界に転生する結末は、
賢治童話において、とても印象的だ。
例 「よだかの星」「銀河鉄道の夜」
(銀河鉄道で物語られるサソリの星なども)

古代の人々は、星を異界の魂に重ねた。
穀物の種に宿る命を死者の転生と思えば、
たとえば天の川を穀物の種に見立てたり、
異界との境界の「忘れ河」に見立てたり、
かがやく天の星に豊穣を願う祈りが
部族や郷土の祖霊と結びついたのも、
ごく自然な心情だったのだろう。

地に生きた先祖は、星になった。
星の恵みで、穀物や海・山の豊穣が
もたらされる……樋(トイ・ヒ)を
トヨと呼ぶ地方があるが、豊川とは
星空の恵みを地におろす樋、
つまり天の川では?
と、とりとめなく夢想した。


桃山学院大学学術機関リポジトリ (nii.ac.jp)

井本栄一氏の論文が多数公開されている。
(大学図書館&インターネットは有難い)


ぶんぶんぶるるん 【改訂新版】|絵本ナビ : バイロン・バートン,手島 悠介 みんなの声・通販 (ehonnavi.net)

賢治の童話ほど自己犠牲的ではなく、
生き物たちの因果がめぐる様を描いた
楽しい絵本を、ふと思い出した。
「ぶんぶんぶるるん」
(バイロン・バートン作 手島悠介訳
 ほるぷ出版 2018.3発行)


( 2023.1.24~28 Twitter より )


翡翠と邪馬台国 – レモン水 (ginmuru-meru.com)

トヨタマヒメ幻想 – ぶるーまーぶる (fairy-scope.com)


オリオン座


星座の暗幕をゆらす風。
ここに居るのは誰だったろう、
ハニワくんなのか僕なのか
わからなくなった……


( 2023.1.17 Twitter より )