梅にうぐいす


幼い頃に読んだ絵本に、
「開けてはいけない座敷に梅とうぐいすが…」
という昔話があってタイトルを思い出せず、
「隠れ里」「まよひが」
等で検索しても見つからず、
あきらめかけていた。

「うぐいすの宿」
というシンプルな語が
思い浮かび、ようやくヒット。
(^-^)
見るなの座敷 – Wikipedia

梅と鶯の取り合わせは、
中国文学(唐代)の影響が濃いらしく、
日本では飛鳥時代以降、万葉集などで
梅に鶯の和歌が詠まれ、古今和歌集にも
受け継がれた、と。
「うぐいすの宿(見るなの座敷)」は
飛鳥時代以降の貴族文化の流れを汲み、
昔話としては新しい系譜だろうか?

梅に鶯 うめにうぐいす 意味・由来 (worldfolksong.com)

とはいえ古典文学も昔話も
「今は昔」の世界観ではあり、
どこの何を基準に、
「新しい系譜」と考えればいいのか、
よくわからなくなる……

(梅にうぐいす、の美意識が飛鳥時代以降、
大和の貴族文学の中で育まれたとして、
東日本に分布する「見るなの座敷」との
関わりについて、断定は出来ない)
(何かの形で昔話へと
伝播はしたのだろうけれど)

(梅にうぐいすの美意識が
中国の唐代文化に由来し、
大和の貴族文学を源流としても)
東日本の昔話として「見るなの座敷」が
広く伝わり根付いたのは、
寒冷で春の到来が遅い雪国の風土で、
春を告げる「梅にうぐいす」モチーフが、
人々に好まれ物語られたからではないか。
(お手玉遊びのわらべ歌も)※

※よも(四方)のけしきを
 春とながめて
 梅にうぐいす ほーほけきょ

よも(四方)のけしきを – レモン水 (ginmuru-meru.com)


(追記)
幾つもの座敷があり、障子をあけると
部屋ごとに四季の風景が広がっている
世界(ひとつの屋敷に四季が同時存在)
は、北欧等の常世信仰を彷彿とさせる。
たとえばオレンジは花と果実を同時に
つけるので黄金の林檎、
常春島の果実とみなされた。
12ヵ月より余る禁断の13番目の展開も
西洋風かも?


( 2023.2.20 Twitter より )


星空の恵みを地におろす


sokenk115_1.pdf (andrew.ac.jp)
当麻寺を訪ねて 井本栄一
(桃山学院大学総合研究所紀要 
第25巻第1号87-95p. 1999-09-30 )

「相撲 新年 七夕 穀神」
など思いつく語で検索したら、
こんな論文が見つかった。
ところどころわからない部分もあるが、
面白くて一気読み。
著書多数の権威ある学者さまらしい。
井本英一 – Wikipedia

上記論文「当麻寺を訪ねて」では、
相撲と穀霊とユーラシアに伝わる
豊穣儀礼について詳述され、
とても読み応えがあった。
(一読しただけでは理解しきれていない)
豊穣儀礼と天上
(日月・星・天の川・星座)
との関りについては触れられていなかったが
(それを検索で探していた)
異界・冥界下り・再生と仏教を論じて奥深い。

上記論文では、
3世紀中国の「問礼俗」を例に、
鶏→犬→羊→豚→牛→馬→人→穀物
の順に魂が転生するという
古代の死生観(輪廻転生)が紹介されている。
人の魂が穀物に宿る、という想念は、
宮沢賢治の辞世の句にもみられる。

病(いたつき)の
ゆゑにもくちん
いのちなり
みのりに棄てば
うれしからまし

また賢治の第一詩集に収められた詩
「春と修羅」の
(このからだそらのみじんにちらばれ)
という言葉には、
「宙への供物」として転生する
文化英雄的イメージが含まれている。
銀河の星や稲穂を詠い、
輪廻転生を下敷きとする
宮沢賢治の詩や短歌の世界は、
「女神※がこぼした小麦の種=天の川」
という古代人の神話にも通底する。

※女神=デメテルやイシスなど大地母神
(娘や夫など愛する者を失い、
彷徨い歩く女神が手にした袋から
こぼれた麦の種が天の川だという)

詩や短歌のみならず
星の世界に転生する結末は、
賢治童話において、とても印象的だ。
例 「よだかの星」「銀河鉄道の夜」
(銀河鉄道で物語られるサソリの星なども)

古代の人々は、星を異界の魂に重ねた。
穀物の種に宿る命を死者の転生と思えば、
たとえば天の川を穀物の種に見立てたり、
異界との境界の「忘れ河」に見立てたり、
かがやく天の星に豊穣を願う祈りが
部族や郷土の祖霊と結びついたのも、
ごく自然な心情だったのだろう。

地に生きた先祖は、星になった。
星の恵みで、穀物や海・山の豊穣が
もたらされる……樋(トイ・ヒ)を
トヨと呼ぶ地方があるが、豊川とは
星空の恵みを地におろす樋、
つまり天の川では?
と、とりとめなく夢想した。


桃山学院大学学術機関リポジトリ (nii.ac.jp)

井本栄一氏の論文が多数公開されている。
(大学図書館&インターネットは有難い)


ぶんぶんぶるるん 【改訂新版】|絵本ナビ : バイロン・バートン,手島 悠介 みんなの声・通販 (ehonnavi.net)

賢治の童話ほど自己犠牲的ではなく、
生き物たちの因果がめぐる様を描いた
楽しい絵本を、ふと思い出した。
「ぶんぶんぶるるん」
(バイロン・バートン作 手島悠介訳
 ほるぷ出版 2018.3発行)


( 2023.1.24~28 Twitter より )


翡翠と邪馬台国 – レモン水 (ginmuru-meru.com)

トヨタマヒメ幻想 – ぶるーまーぶる (fairy-scope.com)


オリオン座


星座の暗幕をゆらす風。
ここに居るのは誰だったろう、
ハニワくんなのか僕なのか
わからなくなった……


( 2023.1.17 Twitter より )


女神の呼びかけ


13日の金曜日。
どこかで黒猫みかけるかな?

13、西洋では不吉とされる数。
金曜日はフライディ、
北欧の豊穣女神フレイヤにちなむ。
黒猫は、魔女の使いだっけ。

メソポタミア神話関連か、
「皿の数が足りなくて宴に招かれなかった女神、
その呪いで病気になったケレト王の娘フルリヤ」
という記述をみかけた記憶?(本かWikipedia)
古い女神。
( ※アーシラト – Wikipedia 2023.4.28 )

皿がでてくる……
皿の数。
宴にそろえる皿。

豊穣の器、豊穣女神……
聖杯。
仏(弘法太子)の鉢。
かぐや姫の難題。

ダグザの豊穣の大釜・竪琴・棍棒。(妄想脱線?)

川上から流れてくる器。
依頼した翌朝、大岩に並べられている器。
恵みの器。豊穣、慈雨。

はちみつみかん ginmuru-meru
はちみつみかん ginmuru-meru
(水源の女神、器、巨石文化)

あれ、これは荒れ地王の物語の原型?
!(‘◇’)?
うろ覚えだ……うろ覚えのまま
ファンタジーに持ち込んだ方が
いいかも……

番町皿屋敷の例は、
皿の数が足りなくて?この伝説も
「皿・呪い・病み衰える城主」で
定型なんだなぁ……
あ、井戸も出てくる。水源……

お菊という女性名からの連想……
日本の菊の紋によく似たデザインの紋章が、
中東のイシュタル門に描かれていたが、
これはナツメヤシの葉を上から描いた形で、
大女神イシュタルの印なのだとか。

宴に招かれなかった古い女神の呪い、
眠り続ける茨姫、暁姫。

忘れられた老いた女神、
眠り続ける年若い女神。
この両者は等しい存在?

過去と未来、茨に包まれて時がとまる城(現在)
糸車は、紡がれる時・命の比喩。
三相女神のメッセージ……
「忘れないで」
「思い出して」
「見つけて」

古代の大女神は、
畏怖の念から名前を隠されていた、
とたしかケルト神話の本で読んだことがある。
ほんとうの名を記されなかった女神。

「私を忘れないで」(過去)
「私を思い出して」(現在)
「私を見つけて…」(未来)

この女神の呼びかけに応えると豊穣の恵みがある。
慈雨がもたらされる。

豊穣の大女神は、
月(満ちる月、満月、欠ける月)の三相。
乙女、美しい婦人、賢い老婦人の三相。
時を紡ぐ三姉妹、
泉と宇宙樹をまもる三姉妹、
のバリエーションもある。
日本の民話では、山姥に面影が残る。
アマテルとシタテルの姫神?
オグラ姫とワカ姫?
ミズハノメとクラミツハ?
うろ覚え……

「私はかつてあり、今もあり、
これからもある全てである。
そして私のヴェールを
人間が引き上げたことはない。
私がもたらした果実は太陽である。」
6世紀半ばのプロクロスの著述によれば、
サイスの神殿の碑文に
こう刻まれていたのだという。
(by Wikipedea)
日本の地方豪族の古墳時代(後期)頃の著。

ハニワくんと相撲 – レモン水 (ginmuru-meru.com)

Hey, diddle, diddle,
  The cat and the fiddle,
  The cow jumped over the moon.
  The little dog laughed
  To see such sport,
  And the dish ran away with the spoon.

マザーグース Hey, diddle, diddle より。
お皿は逃げ去った……月と星の宴から。

Hey, diddle, diddle-Mother Goose – レモン水 (ginmuru-meru.com)

13日の金曜日
(じゅうさんにちのきんようび、英語: Friday the 13th)
とは、英語圏の多くとドイツ、フランスなどの
迷信において不吉とされる日である。
13日の金曜日 – Wikipedia

( 2019.12.13 Twitter より )


お皿は逃げたので、宴の器がたりない。
古い女神の残像、マザーグースに……
深読みしすぎかな……?

ハニワくんとオリオン座のイメージを
繋げたい。
あかつき姫(アウローラ)とオリオンには
恋の神話あり。
日の出の地平線を象徴する獅子(猫)と
あかつき姫(茨の城の眠り姫)とが繋がる。
「ののさま」わらべ歌
「ののさまどちら いばらのかげで
 ねんね(子猫)をだいて花つんでござれ」

( 2019.12.17 Twitter より )


夜明けの猫、黄昏の猫。
未来、過去。

犬のシロはどうしようかな……
舟型の棺に首長と犬とが埋葬されてた
弥生時代の遺跡があったっけ。

( 2019.12.18 Twitter より )


たそがれどき、暗くなった路で
見知らぬ館にたどり着いたら、
おばけ屋敷で、山姥いたり、
派手におっかないのが面白そう、と
脱線したことを考える。
あかんあかん、
不思議な博物館でなくちゃ……
きれいなお姉さんがお茶淹れてくれるとか。

( 2020.1.21 Twitter より )


(2)星座の切符


ことん、ことん、水車がめぐる。
暗闇の水音は、どこからどこへ流れていくのか。
歩きつづけた先に、明かりがぽつり。
近づくにつれ、明かりはゆらゆら大きくなった。
木立が風に鳴り、空気は真冬の冷たさだ。
夜空を照らし、かがり火が燃えている。
かがり火に浮かぶのは、ひとり舞う誰かの影。

ののさまどちら いばらのかげで
ねんねをだいて はなつんでこざれ

なつかしい歌声……この声は……

illust 2021©fairy-scope.com

大岩の上で舞う美しい姿は……
ああ、そうだ、思い出した。
ハニワくんと旅したときに出会った、水瓶の姫。
あの大岩は、工事で失われたはず。

「ゆずりの丘」には、
ずっと昔の王さま姫さまのお墓があって、
丘の大岩におねがいすると、
日照りに雨がふったり、
災いからかくまってくれたり、
きれいなお皿や器をかしてくれたりするのだと、
幼い日にぼくは、おばあちゃんから聞いた。

その大岩に立ち、ゆれるかがり火とともに、
たおやかに歌い舞う姫……この声、この横顔は、
「ふるさと博物館」の受付けのお姉さんに
そっくりじゃないか。

ミヤァ……
姫の歌と舞いが、ぴたりと止まった。
黒い子猫が大岩にとびのり、甘えるように鳴いた。
姫は、子猫をだきあげた。
ミヤァ……
ふと姫がぼくを見て、にっこりした。
「また会えましたね」
なつかしい、すきとおった声……
「あなたの助けがほしくて、使いを出したのです」
「え?」
姫の柔らかなまなざしが、ぼくをしっかりとらえて離さない……
ハニワくんはどうしたんだろう、と不思議に思った。
「ぼくの助け、ですか?」
水瓶の姫に仕えて助けるのは、
ハニワくんの役目のはずじゃないか……

姫は身をかがめ、腕にだいた子猫をおろすと、
かわりに大切そうにひとつの水瓶をささげ持った。
「あなたをここに導いたせせらぎは、この先、
大きな星の川へと流れつきます。
その川の向こうにいる太陽の姫に、
この器でくんだ川の水を、届けてほしいのです」
大岩の上の姫がひざをつき、さしだす水瓶を、
ぼくは両腕をいっぱいにのばし、受け取った。
かがり火が照らすその水瓶には、
花びらのような肉球のくぼんだ跡が点々とある。
丸みのある胴、くびれた注ぎ口……
これ、この水瓶、もしかして、
博物館の展示ケースに並んでいた、
ブルーグレイの須恵器?

ずしりと手ごたえのある古い水瓶を、
ぼくはまじまじと見つめた。
「太陽の姫は、眠りの病いにかかっています。
あなたが水を届ければ、きっと姫は目覚めます」
「きっと、と言われても……」
ぼくは大岩の上の姫を、とまどって見上げた。
「流れにそって行けば、わかります」
姫はほほえんで、暗い夜空に目をやった。
ぼんやりと白く天の川が流れ、いくつもの星が
きらめいている。
オリオン座、双子座……
ミヤァ……
黒い子猫が、身軽に大岩から飛びおりて、
ぼくの足にじゃれつくと、するりとかけだした。
「あ、まってくれ」
ぼくは、空っぽの水瓶をしっかり抱いて、
子猫を追った。
「わかりました、行ってみます」
助けてほしいと頼まれて、姫にそう返事したものの、
まったくおぼつかないままに。

子猫がかける、水音がとぎれずひびく。
ぼくはひたすら追いかける。
気がつけば、暗闇に大きな水面がひろがり、
目の前できらきらと波立ち、光っていた。
(あなたをここに導いたせせらぎは、この先、
大きな星の川へと流れつきます)
「これが、星の川?」
岸辺に、いくえもさざ波が寄せてくる。
「暗くて向こう岸がみえやしない」
大きすぎる川幅におどろき、あたりを見まわすと、
舳先に灯をともした小舟がいっそう、
渡し場につながれていた。小舟のかたわらには、
マントにすっぽり身を包んだ渡し守が、
のっそりたたずんでいる。
「あの、向こう岸までのせてもらえますか?」
声をかけると、マントの男は不愛想に一言。
「切符はあるか?」

「切符?え、えっと……これなら?」
困ったぼくは、上着のポケットから、
黄緑色のチケットをひっぱりだした。
オリオン座をしるした小さな紙片だ。
渡し守は、それをながめて首をふった。
「だめだな……切符の行く先がちがう」
「頼まれごとがあって、ぼくはなんとか
この川をわたりたいんです」
「向こう岸には簡単に行けるものではない」
男の顔は、マントにかくれて見えない。
「切符がないと舟には乗れませんか?」
ミヤァ……
黒い子猫が、いっしょに頼むように鳴いた。
ミヤァ……
子猫が渡し守の足元にするりと寄りそって、
ぶあついマントのひだをゆらした。
ミヤァ……
しばらく沈黙してから、ぼそりと渡し守が言った。
「どうしても舟に乗りたいなら、相撲の勝負をしろ。
もし私に勝ったら、向こう岸につれていく」

「ほ、ほんとですか?挑戦します」
ぼくは両腕にかかえていた水瓶を上着でくるみ、
渡し場からはなれた地面にそっと置いた。
もし割れてしまえば、姫が悲しむだろうから。
「頼むよ、これしばらく見ててくれ」
子猫に声をかけると、ミャーと良い返事。
「ぜったい勝ってやる、いきますよ」
「くるがいい」
渡し守はマントをぬごうともしない。
のっそりたたずみ、ぼくなど相手にしていない風情。
それでもかまうもんか……他に道がないのなら?
「本気でいきますよ」
ぼくは、力いっぱい足を前に踏み出した。