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読書メモ

 

 

 

- Twitter より -

 

 

 

 

ジェネレーション< P >

ヴィクトル・ペレーヴィン著 東海晃久訳

(河出書房新社 2014年5月30日 初版発行)

 

ー< P >の世代ー

ードラフト・ボディウムー

1〜2章 読了(全16章)

 

ソビエト連邦の崩壊に「永遠」を見失い、

売店の売り子として日銭を稼ぐ若き詩人が、

友人に誘われ広告業界に身を投じる顛末。

(2023.2.27)

 

 

ーティハマート-2ー

ーイシュタルの三つの謎掛け―

3〜4章読了

 

広告業界の若手として認められ始め、

有力なパートナー(プーギン)と出会う。

課題の煙草CM案に悩み、

学生時代の資料を読み耽ったり、

古い友人に再会し、

ベニテングタケの茶を試飲して

酩酊・幻覚の中で彷徨ったり。

神話的な詩情と無常感。

 

民主化したロシアにあって、

欧米と異質なロシア人気質を意識し、

近い将来に訪れる生産力低下・

財政破綻・社会不安・軍事独裁を予見。

その国家観を組み込んだ広報戦略(擬スラブ様式)

を提案する主人公の企画書のくだり、

思わず幾度か読み直した。

(著者は祖国の現状にどんな思索を重ねているだろう)

 

憂いに満ち退廃的であるが、

バビルの塔やジグラド・女神イシュタルの象徴

(黄金の仮面、鏡、ベニテングタケ)と、

ソ連軍の廃墟で拾ったガラクタ

(外国コイン、テレビ型の鉛筆削り、煙草の空き箱)

とを幻想的・直観的に結びつけるヴィジョンは、

詩的で余韻がある。

圧倒的筆力(に伴う危険な香り……)

(2023.3.2)

 

 

ー貧しき人々ー

ー自己への道ー

5〜6章読了

 

広告業界で仕事を得つつ、

闇取引の薬物に頼ったり、

東洋的スピリチュアルに癒しを求めたり、

不安定な主人公の日常。

仕事の相棒だったプーギンが

犯罪に巻き込まれ急死、

プーギンの取引相手ハーニンの会社に

クリエイターとして雇われるも

一抹の不安。

 

 

ミヒャエル・エンデ「モモ」で、

時間泥棒(灰色の男たち)が

モモの自由奔放な遊びの時間を奪おうと

手練手管を駆使する場面がある。

ペレ―ヴィンの描く主人公は、

ソ連崩壊と新時代の波に翻弄され、

心ならずも「灰色の男たちの一員」と

なって彷徨う詩人……

モモの友人ジジの変貌を彷彿とさせる。

(2023.3.24)

 

 

ーホモ・ザピエンスー

7章読了

 

テレビCMをザッピングする人々を

「ホモ・ザピエンス」と定義、

仮想新人類の行動原理(ワオ!)を

3つの衝動

(取得・消費・金銭的な価値観以外を排除)

で分析。

 

この分析は、

ウィジャ・ボードによる自動書記で、

ロシア広告業界に生きる詩人に

呼び出された「チェ・ゲバラの霊言」

という設定。

現代メディアの物質経済至上主義

(=金銭がすべて)の虚しさへの、

冗談めかした批評は鋭い。

(戦争さえテレビの中の虚構になる、

という霊言の未来観は安直にすぎるが…)

 

×戦争

〇終末(キリスト教的な)

 

(ハルマゲドンのイメージから

「戦争」という言葉に脳内変換された……)

 

明日(5月9日)はロシア戦勝記念日だが、

ウクライナとの戦争の行方は混沌としている。

多くの犠牲者を出し継続されている

国家間の戦争は、

現実の歴史の中で進行中の悲惨な出来事だ。

小説の主人公タタールスキィそして

作者のペレーヴィンは今、

祖国のリアルを苦く複雑な眼差しで

見つめているだろうか。

(2023.5.8)

 

 

ー安らぎの港ー

ーバビロンの切手ー

ーヴォフチクちんー

ー養蜂研究所ー

8〜11章読了

 

上司ハーニンと語り合ううち、彼は

主人公が少年時代に演説を聴き魅了された

憧れの人(旧ソ連プロパガンダ担当者)

まさにその人だったと知り、意気投合。

 

言葉への若々しい情熱が

仕事上の信頼関係と結びつき、

生きる希望を見出しかけたのも束の間、

高揚感のまま薬物に溺れトラブル遭遇、

救いに来てくれた上司もろとも

危険の渦中へ。

一夜にして失業、

呆然としつつ旧知の業界人の紹介で、

国家的プロパガンダの

(胡散臭い)権威的組織へ……

サーガ風な展開。

(2023.6.28)

 

 

ペレーヴィンの小説、後半に至る。

翻訳がとても真面目な文体、

主人公タタールスキィは知的・繊細な

イケメンさんに脳内変換されるも、

読み進むうちに違和感……

もとのロシア語では5ちゃんねる調の

大衆小説なのでは?

主人公もなかなか破天荒?

と娘に感想を述べたら、

盛大な結末ネタバレ (;^_^A

 

ネタバレ要らないと言う端から、

バラされてしまった……が、

途中で予想がついていたので、

驚きのまったくないグダグダ感が、

この作者の持ち味っぽい。

(文章に漂うビジョンには

折々にハッとさせられる)

 

破天荒な小説を突き抜け、

隣の兄弟国との戦争中のロシア。

(現実を映す鏡としての虚構)

(2023.7.1)

 

 

Twitter一時的な閲覧制限か。

なんとかまだ読めてる……

「極端なレベルのデータスクレイピングと

システム操作に対処するため」

(イーロン・マスク氏)

え、Twitterサーバーに攻撃あったの?

ロシア・ウクライナの戦争も

混沌としてるし……なにか

国際情勢などがSNSに影響してる?

(ふと気になる)

(2023.7.2)

 

 

イーロン・マスク氏の意図は、

AI対策との記事を散見……

それもまた

ペレーヴィンの小説っぽく、

事実は小説よりも奇なり、の

世界=現代社会。

(2023.7.3)

 

 

ーズボンを穿いた雲ー

12章読了

 

試用期間後の昇進に際し、

職場の機密部署に案内される。

国会や政治家のニュースが

広告代理店的組織により

3DCG映像で作られた虚構と

説明された主人公は、

国の舵取りの責任は何処に?

と疑問を抱くが、上司に

思考停止を求められる。

(まさに灰色の男たちの世界)

(2023.7.10)

 

 

ーイスラミック・ファクターー

13章読了

 

かつて自ら癒しを求め

ウィジャ盤で自動書記した

「チェ・ゲバラの霊言=3ワオ理論」

それが国家プロパガンダの中枢に

織り込まれていると気づく主人公。

広告主の意向とアメリカの電波利権に

振り回され、嘘と罪に染まる広告業界

(国際問題の報道さえ茶番)

 

トンデモ展開。

以前読んだはずのアメリカ文学

「ガープの世界」の感触を

ふと想起(←内容は思い出せない)

ただし「ガープの世界」ほどの

濃い人間関係が主人公にはない。

(人恋しそうな描写はあるが希薄)

陰謀論的な世界観は、

ウンベルト・エーコ「フーコーの振り子」

にも似るが、もっと軽い。

 

小説の感触は軽いけれど、

ロシアの国家プロパガンダの営みを

戯画的に描く本書の内容が、

現在進行形のロシアとウクライナの

現実の戦争に、

どこか重なっているとも感じられ、

奇妙に重い。

(文学を文学として純粋に楽しめない)

読み進めつつ違和感がまとわりつく。

(主人公はトリックスター的)

(2023.7.19)

 

 

―危機の時代ー

―黄金の間ー

ーツボルグマンー

訳者解説 東海晃久

 

14~16章&解説 読了

 

「危機の時代」という

小見出しから

更なるカタストロフィを

警戒しつつ読んだ。

不穏ながらも内輪での

種明かし的展開、

張り巡らせた伏線回収。

陰謀論的な秘教組織

「庭師の結社」の存在と

生贄儀式を描く。

 

トレンドの寵児(イシュタルの夫)に

選ばれた主人公タタールスキィは、

詩人を志す貧しい文学青年から、

サーガのダークヒーロー、

世界を彷徨するトリックスターへと

変貌しつつ、やはり最後には

神話的詩情をまとったアウトサイダー

の面影へと回帰したように感じた。

光を探し求める求道者の軌跡。

 

雪原に眠る犬(世界的な死をもたらす)

に怯え、自らの仕事こそが

(ロシアのプロパガンダ戦略が)

図らずも、その犬ではないのかと

疑念を抱き、

欧米文化・資本主義体制への融和の意思と

ロシア文化という土壌との齟齬に悩みつつ、

歩き続ける詩人の、詩情だけは本物。

 

1999年発表された本書は、

20世紀(東西冷戦)への挽歌だろうか。

 

一読しただけでは細部の読み落としも

あるだろうし、この不可思議な作品に

自分の理解が及んでいるのか怪しいが、

トンデモ展開に振り回されつつも、

読後感は思ったほど悪くない。

主人公タタールスキィの詩人っぷりに、

どこかしらランボーの破天荒さを重ね、

なんだかんだ惹きつけられた……かも?

 

 

私は歩いた、夜天の下を、ミューズよ、私は忠僕でした。

 

幻想的な物影の、中で韻をば踏んでゐた、

擦り剥けた、私の靴のゴム紐を、足を胸まで突き上げて、

竪琴(たてごと)みたいに弾きながら。

 

「わが放浪」より引用

(アルチュール・ランボー作、中原中也訳、青空文庫)

 

ランボオ詩集 中原中也訳 青空文庫

(2023.8.1)

 

 

 

 

宇宙飛行士 オモン・ラー

ヴィクトル・ペレーヴィン著 尾山慎二訳

(群像社 2010年9月7日 第2刷)

 

1〜7章読了。

宇宙飛行士に憧れ、

宇宙開発(月探査)に進路を定め、

友人ミチョークとともに

ソヴィエト軍の航空学校試験に挑み

合格した若者オモン。

ブラッドベリのSFに似た詩情と哀愁がクール。

 

風刺的なSF小説風&綺麗な文体なので、

すいすい読めると思ったら甘かった……

(だんだん不穏な雰囲気が立ち込めて、

フィクショナルな仕掛けが予感される)

一気読みはあきらめ、ひと休み。

続きはまた明日。

(2023.1.5)

 

 

8〜15章&解説 読了。

中盤以降を一気読み………

「もしかして?」と先の展開を予感させつつ、

自然に読ませる詩情・筆力。

夢との境界が曖昧な旧軍の描写に、

ウクライナ戦争の現実が重なり憂う。

 

この作品が発表されたのは、

ソ連崩壊まもなくの1992年。

作者は1962年モスクワ生まれという。

20代後半に祖国の激動を体験し、

瑞々しい文体に鋭い社会風刺を込め、

SF仕立てで描いてみせた力量は圧倒的。

もしソ連の体制のままだったら

出版不可能ではなかったか。

冴えた抒情性は年月を経ても色あせない。

(2023.1.10)

 

 

「先日、軍の政治将校の非公開会議で、

われわれの生きるこの時代が

『戦前』と定義されたんだ!」

「(略)そしてその日以来もう一ヵ月経っているが、

いまやわれわれは戦前を生きているんだ。

わかるかな、どうだ?」

(同書4章39~40p.)

 

ソ連時代のプロパガンダの虚構性を描いた

30年前のロシア文学。

(2023.1.11)

 

 

<追記>

魔法のカクテル

ミヒャエル・エンデ作 川西芙沙訳

( 岩波書店 1992.11.12 発行 )

 

少年時代にナチスヘのレジスタンスに参加したりと、

異色な経歴の西ドイツの作家ミヒャエル・エンデ作

ファンタジー「魔法のカクテル」が、1989年

(ベルリンの壁崩壊)に発表された。

翌1990年に東西ドイツが再統一。

 

強いメッセージ性には賛否あるが、

私はエンデの作品が好き。

(2023.1.11)

 

 

 

 

 

 

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